乳がん検診でよく記載される所見について
乳腺科乳がん検診で行われるマンモグラフィや超音波(エコー)はそれぞれガイドラインがあり、それに基づいて「所見」が付けられます。
この所見はあくまで画像に写っているものです。乳腺は個人差が大きく、正常乳腺が「所見」のように見えることもあるし、良性の変化が「所見」として見えることもあります。(乳腺の良性の変化・病気)
それら所見はカテゴリー分類といって5段階に分けられます。一般にはそのカテゴリー分類のうち、カテゴリー3,4,5が精密検査となります。
検診の結果ではカテゴリー分類が省略されて、画像の所見のみ記載されていることがよくあります。基本的には、所見が記載されていても、精密検査でなければ心配はいりません。
良性で心配いらなければ検診で所見を記載しないという選択肢もあるのですが、今は乳がん検診をいろいろな場所で受ける方が多いです。前回の検診でどのような所見があったのか、受けた方にお伝えしておくことは、次の検診の時に参考にしていただける意味もあるかと思います。もちろん同じところで検診を受けるのが一番好ましいことは間違いありません。
マンモグラフィの主な所見
乳腺腫瘤
しこりのように見える所見があるということです。その濃度や、形、境界の状況などから精密検査の必要性を判断します。腫瘤のうつり方や前年との比較から腫瘤があっても、精密検査にならないことはあります。
石灰化
乳腺にカルシウムが沈着したものです。カルシウムの沈着はホルモン、加齢、授乳、そしてまれにがんなどの影響で起きる症状です。その石灰化の形や分布の状況などから精密検査の必要性を判断します。石灰化は直ちに判断するのが難しく、半年ごとに経過観察を行うこともあります。
局所非対称性乳腺
左右比較したときに、やや非対称に見える部分があるということです。腫瘤がこのように見えることもありますが、乳腺症など良性の変化のこともあります。
構築の乱れ
乳腺の引き連れや歪みをいいます。しこりや石灰化と一緒にみられることもあります。手術や乳腺炎の跡が、このように写ることもあります。
乳腺濃度
乳腺濃度とは病名ではありません。乳房の写り方により、全員4段階に分類されます。(乳がん検診でよく記載されている分類)
特別に心配する必要はありませんが、高濃度乳腺の方は、マンモグラフィだけでは所見を見逃すことがあるとわかっています。高濃度乳腺の方は、エコー検査も適宜受けることが勧められます。
乳腺エコーの主な所見
乳腺症
エコーにおいては乳腺がヒョウ柄のように見えたり、黒っぽく見えたり、良性のしこりのように見えたりする変化を総称して乳腺症と言います。乳腺症自体はホルモンの影響による変化で特に治療は必要ありません。
嚢胞(のうほう)
水が溜まった袋のことを言います。乳腺は母乳を作る組織ですから、水がよく溜まります。特に25-35歳では3人に1人は嚢胞を認めます。ほぼ心配いりません。
乳管拡張
乳汁の通り道である乳管が太くなって目立つものです。授乳期は当然太くなります。乳管が太くなっている原因が特にない場合に、記載されます。
乳管内腫瘤
乳管が拡張し、内部に腫瘤がある場合に記載されます。エコー所見から明らかに良性と判断されるものは、乳管内乳頭腫と記載されることもあります。基本的に乳管内腫瘤は細胞検査で良悪性を判定し、変化がないか定期的に経過観察が勧められます。
乳腺腫瘤
しこりのように見える所見があるということです。形や大きさ、境界や内部の性状から精密検査を要するかどうか判断します。実はエコーの所見のみで腫瘤の良性・悪性を判断するのは難しいです。本来は針を刺して細胞を調べないと確定診断はつきません。ですが、乳腺には良性変化もたくさんあります。検診エコーで明らかに良性と考えられるものについては、1年後に再度検診をうけ、変化がないかどうか比較することが勧められます。